「さらば、わが青春の少年ジャンプ」と「編集王」のひどすぎる相違点 [心に残る1コマ]
西村繁男「さらば、わが青春の少年ジャンプ」を読むと、
土田世紀「編集王」の感じ方もまた変わってくるから面白い。
編集王の疎井編集長の若き日のエピソードは、
少年ジャンプの創刊エピソードを元にしている。
が、編集王における
・商業主義によって、くだらない漫画がヒットする。
・心ある善良な若い漫画家がその犠牲となる。
・理想に燃える若き編集者は心を殺し、帝国軍のダース・ベイダーとなる。。。
…という内容とは「青春の少年ジャンプ」は真逆の内容なのである。
編集王を読み直すと、
若き日の疎井の感性は、到底漫画編集者に向いているとは思えない。
>毎週毎週志のない作家と志のない仕事をして…そうやって出来たクズみたいな作品が読者には圧倒的に支持されて、毎週毎週応援のハガキが山のように届くんですよ。
>作家や編集部がバカなうちはまだ我慢出来ます…。だけど読者に絶望しちまったらもう何も信じるものがないですよ。作家・編集者・読者…、馬鹿どもの三平方の定理だ。
同僚も取引先(作家)も読者もバカ扱い。
自分の主観のみを正しい価値と信じて、裏切られた、虐げられたと絶望する。
有害な漫画を終わらせろと編集部に迫った寺田ヒロオや、悪書追放のPTAの感性と一緒なのだ。
逆に編集王の若き日の疎井のモデルになったジャンプ編集長の西村繁男は同僚を心底頼りにしている
下品だの暴力的だの眉をしかめる大人をガン無視して、子供が心底楽しめるものだけを追求したからこそ653万部が達成できたという。
(画像は本宮ひろ志「やぶれかぶれ」に登場する西村繁男)
そしてジャンプは決して売れる事しか眼中になかった雑誌では無い。
今でいう萌え系路線である、当時の売れ線のラブコメに迎合しなかった。
そして編集王の世界だったら絶対に編集者に潰される役で出てくる、
諸星大二郎、星野之宣のようなマニアックな漫画家を見出したのもジャンプなのである。
(画像はあだちつよし/宮崎克「怪奇まんが道 奇想天外篇」)
もちろん読者の支持が得られなければ打ち切るのだが、そこは結果平等である。
西村らは自信を持ってそれらの作品を世に送り出していたのだ。
一方の疎井編集長は「本当は誰より漫画好き」なんだそうだが、
どこが?と疑問に思わずにはいられない。
突っ込んでもしょうがないのだが、仙台さんとその師匠の漫画以外で面白いと思った漫画が果たして劇中で一作でもあったのだろうか。ストライクゾーン狭すぎである。
西村繁男の血を吐くような苦労も、事務的にアンケート至上主義に徹しさえすれば誰でも100万部達成できる話にアレンジされてしまうのだから、よくよく考えてみればひどい話だ。
よく「653万部はバブルだった」と言われて憤慨したということを、実際西村は発言している。
小畑健&大場つぐみの「バクマン。」には
>「正直に言うと僕達にだって何が当たるか当たらないかなんて完璧にはわからない。それがわかれば新連載があんなすぐには終わらないだろ」
と言うセリフがある。
こっちの方がアンケート至上主義に携わっている人間の台詞としてリアリティあると思う。
あまり何も考えずに編集王を読むと、これを感動の一編だと思って読んでしまうのだから、土田世紀のエンターティメントマジックというものなのだろう。
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土田世紀「編集王」の感じ方もまた変わってくるから面白い。
編集王の疎井編集長の若き日のエピソードは、
少年ジャンプの創刊エピソードを元にしている。
が、編集王における
・商業主義によって、くだらない漫画がヒットする。
・心ある善良な若い漫画家がその犠牲となる。
・理想に燃える若き編集者は心を殺し、帝国軍のダース・ベイダーとなる。。。
…という内容とは「青春の少年ジャンプ」は真逆の内容なのである。
編集王を読み直すと、
若き日の疎井の感性は、到底漫画編集者に向いているとは思えない。
>毎週毎週志のない作家と志のない仕事をして…そうやって出来たクズみたいな作品が読者には圧倒的に支持されて、毎週毎週応援のハガキが山のように届くんですよ。
>作家や編集部がバカなうちはまだ我慢出来ます…。だけど読者に絶望しちまったらもう何も信じるものがないですよ。作家・編集者・読者…、馬鹿どもの三平方の定理だ。
同僚も取引先(作家)も読者もバカ扱い。
自分の主観のみを正しい価値と信じて、裏切られた、虐げられたと絶望する。
有害な漫画を終わらせろと編集部に迫った寺田ヒロオや、悪書追放のPTAの感性と一緒なのだ。
逆に編集王の若き日の疎井のモデルになったジャンプ編集長の西村繁男は同僚を心底頼りにしている
下品だの暴力的だの眉をしかめる大人をガン無視して、子供が心底楽しめるものだけを追求したからこそ653万部が達成できたという。
(画像は本宮ひろ志「やぶれかぶれ」に登場する西村繁男)
そしてジャンプは決して売れる事しか眼中になかった雑誌では無い。
今でいう萌え系路線である、当時の売れ線のラブコメに迎合しなかった。
そして編集王の世界だったら絶対に編集者に潰される役で出てくる、
諸星大二郎、星野之宣のようなマニアックな漫画家を見出したのもジャンプなのである。
(画像はあだちつよし/宮崎克「怪奇まんが道 奇想天外篇」)
もちろん読者の支持が得られなければ打ち切るのだが、そこは結果平等である。
西村らは自信を持ってそれらの作品を世に送り出していたのだ。
一方の疎井編集長は「本当は誰より漫画好き」なんだそうだが、
どこが?と疑問に思わずにはいられない。
突っ込んでもしょうがないのだが、仙台さんとその師匠の漫画以外で面白いと思った漫画が果たして劇中で一作でもあったのだろうか。ストライクゾーン狭すぎである。
西村繁男の血を吐くような苦労も、事務的にアンケート至上主義に徹しさえすれば誰でも100万部達成できる話にアレンジされてしまうのだから、よくよく考えてみればひどい話だ。
よく「653万部はバブルだった」と言われて憤慨したということを、実際西村は発言している。
小畑健&大場つぐみの「バクマン。」には
>「正直に言うと僕達にだって何が当たるか当たらないかなんて完璧にはわからない。それがわかれば新連載があんなすぐには終わらないだろ」
と言うセリフがある。
こっちの方がアンケート至上主義に携わっている人間の台詞としてリアリティあると思う。
あまり何も考えずに編集王を読むと、これを感動の一編だと思って読んでしまうのだから、土田世紀のエンターティメントマジックというものなのだろう。
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こんにちは。
西村繁男さんについては「まんが編集術」という本がお勧めです。こちらはインタビュー集でマイナー作品について割と語ってます。ただ、インタビュー形式なので今一つ文体にしまりがないですが、割と核心をついた話をしています。
加えて、西村さん後の後藤広喜編集長の「「少年ジャンプ」黄金のキセキ」もお勧めです。西村編集長とかぶる箇所もありますが、各漫画に対する批評などが的確で中々面白いです。特に90年代の凋落の原因が雑誌にこだわる後藤、堀江派と単行本などメディアミックスでかじ取りをしようとする鳥嶋、高橋派の対立が原因だったという事実が垣間見れて面白いです。
あとこちらのインタビューもいいですね。ジョジョを担当した椛島さんのインタビューですが、件のマイナー路線が原点だったこともわかります。https://manba.co.jp/manba_magazines/21809
by ネスカフェ (2023-11-05 13:36)
椛島良介さんの記事が良いですね。
祖父の漫画はあまり読んでいなかったのか!
そしてやはり「伊賀の影丸」は強い。
「まんが編集術」は高くて手を出していなかったのですが、状態の良くないので安いのがあったので購入してみました。黄金のキセキは手塚先生が受賞後の荒木先生を気にかけてたエピソードが良かったですね。
by hondanamotiaruki (2023-11-06 09:35)