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登校拒否児童がいたらどう関わればいいのか、棚園正一「学校へ行けない僕と9人の先生」を再読する [名作紹介]

棚園正一の「学校へ行けない僕と9人の先生」を電子化した。

作者の不登校時代を描いたものだ。エラーチェックに読み返したのだが、相変わらずボンヤリとした内容だなと思いつつ読んで、でも最後の鳥山明に会うシーンで泣きそうになるぐらい気持ちが高揚してきて卑怯だ!と思う。チェックの結果、結構なページ数でゴミが入っていたので再スキャン。またしんどいなと思いながら再度読み返したのだが、3回目でなんか自分の感想が変わってきて驚いた。

この漫画、少なくとも爆発的には売れてないだろうと思う。鳥山明に会うまでは鬱々とした展開が続いて辛い。どうやれば不登校児を救えるのか。8人の刺客が次々と襲いかかっては最強不登校児に破れて去っていく構成。読者的には「そりゃ失敗するよ」とか、「これでダメだったのか」とか、「そんな方法が!」とか「ああすれば良かったのに!」みたいな感想を持ちたいところだろうが、そうではない。ボンヤリとスタンド攻撃を開始し、ボンヤリ敗れ去っていく。リアルといえばまあリアルだが、見たくないリアルさではある。

見たくないリアルさといえば、家の不幸で疎遠になった友達と無理やりよりを戻そうとして激しく拒絶される展開。なんか思い出したくもない似たようなことを過去に経験したような気がして、無意識に自分がこの作品から目をそらしているようにも思えてくる。しかしよく考えてみれば、こういうことを繰り返して、人付き合いにおける距離感というのを誰しも学んできたのかもしれない。
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最終的に学校について、「やっぱり好きな場所じゃない。ただそれを負い目に感じたり居場所が無い事をあまり気にはしなくなった。まったくしない訳じゃないけど…」としているのは素晴らしい悟りだと思う。人それぞれに性分というものがある。なんでもかんでもポジティブに捉えるべきだ、マイナスよりプラスの方がいいに決まってる、みたいな考えは間違いだと年取るにつれて思うようになってきた。
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人付き合い苦手なんですよ、というと、「え、全然普通に話せてるけど」と戸惑われることがある。訓練や勉強によってコミュ能力は上げることができたけれども、やはり性に合わない事をすると負荷がかかって当然である。結局表面的なものだから、あまり深い信頼関係を気づけないことも知っている。こういう理屈をまったく理解できない幸福な人が多いことについては、もう諦めている。

結局、自分の周りに不登校児がいたとしたら、どう振る舞うのが適切なのか考える。この漫画的にいえば、好きな事をさせたのが正解だったのだろう。その好きなものが、たまたま社会的にある程度評価されるジャンルのものであったのは幸運だった。そしてその道の達人が近い距離にいたことも幸運だった。理想の人間の存在は、成長の良き雛形となるはずである。

8人の先生の多くは読者に明確なカタルシスを与えられるほどの成果を得られず、得られたとしても大して少年に心を許されていない。ここもポイントだと思う。だからと言って失敗だった、やらなきゃ良かったということでもない。幾人の大人が失敗する姿を見せることも重要だったのではないかと思う。誰しも万能ではない。主人公だってそうである。そうやって、等身大の大人を見ることで、身の丈にあったストレスの少ない成長した自分の雛形を主人公は見つけたのではないか。

だから、価値観の押し付けであろうとも、売名であろうとも、8人の先生が自分のやれる事をした結果、たまたま幸福な結果につながった。エンターティメントと呼ぶにはあまりにもボンヤリした流れだ。子育てに正解はねえ!と言ってしまえば身も蓋もないが、まあそういう事だ。カタルシスを得られる子育て漫画を読めることが幸福だとも限らないのかもしれない。それはなんら実用性のない、快楽だけのファンタジー作品かもしれないからだ。

この漫画をもっと売れ線にするために誰もが思いつくであろうことは、成果を出せない先生を醜い悪人にして主人公に拒絶され、成果を出す先生を美形の善人にして主人公と深い信頼関係を結ばせることだ。しかしこの漫画では、主人公の内面を気遣うタイプの先生はあまり良い結果を残せないばかりか、自身もダメージを食らってとっても辛そうだ。反対に、ガサツなタイプの先生は主人公にどう思われようが何処吹く風。そして結果を出している。ガサツでも、何件もプラモ屋を回って鳥山明のレアアイテムを探し出して買ってきてくれる優しさがある。普通こんなことは出来ない。ちょっと考え込んでしまうところだ。でも別に主人公と深い信頼関係で結ばれることもない。うーむ。。。
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ところでこの漫画の作者は、現在亀仙人が第一線で戦える実力者になっている展開をどう思うのであろうか。次回作はドラゴンボールブランドの管理が、えらい杜撰になってるように思える件について漫画化してほしい。

 

学校へ行けない僕と9人の先生 (アクションコミックス)

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  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/02/27
  • メディア: Kindle版



ドラゴンボール超 8 (ジャンプコミックス)

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  • 作者: とよたろう
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/12/04
  • メディア: コミック

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