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「右」的な思想を生まれて初めて感じた1984年の車田正美「男坂」 [名作紹介]

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打ち切り漫画のレジェンドとして知られる車田正美の「男坂」
奇跡の復活を果たして長らく中断していたが、いつの間にかジャンプ+で再開していた。

読んでいてなかなか辛い。
やたら「メルヘンだなあ〜」みたいな展開になるのはどうなのか。
あのニコニコ顔に頼るのやめて欲しい。

ついでに、打ち切られた初期の方も無料で読めたのだが、圧倒的に作画に脂が乗っていて驚く。ひょっとしたら、この時期が聖闘士星矢以上に車田正美の旬だったのかもしれないと思わされる。

「男坂」は、言うなれば番長ワールドカップ漫画だ。
大ヒット作「リングにかけろ」は、ボクシングのジュニアユース大会を、まるで世界大戦の様な異様なテンションにまで高めた漫画だったが、それの番長バージョンというわけだ。大人からすればギャグなのだろうが、子供の頃は読んでいてそんなことは微塵も感じさせない圧倒的な説得力があり、今読んでも空気にねじ伏せられる。こういう世界がひょっとしたらあるのかもしれないと。本宮ひろ志の「男一匹ガキ大将」がベースにあると思うのだが、読んだことがないのでよくわからない。

思えば「右翼」的な思想をはっきり意識したのはこの漫画家もしれない。
連載当時はインターネットなどなく、世論をマスコミが作っていた。経済は良かったが、やれエコノミックアニマルだの、世界から嫌われる日本だの、うんざりする様な論調を日々繰り返していた印象がある。日本ってそんなに悪い国なのかなあと、小学生ながら疑問に思っていたところにこの漫画である。

主人公のライバルである武島将(たけしましょう)は語る。
「おまえはこの海のむこうにアメリカという国があるのを知っているか。日本の25倍もある大国だ。今の日本の大人たちはすべてにおいてそのアメリカの顔色ばかりうかがっている。だがオレが大人になったときはそうはさせない。なん年かなん十年かのちこの日本をアメリカと対等にするためにオレはこの海を渡るんだ。」

ああ、こういうこと考えていいんだと思った。
テレビはいつでも「日本人は前科者であることを自覚して世界に萎縮して生きろ」みたいなことを言い続けていたので、目から鱗だった。「海賊王にオレはなる」は名フレーズだとは思うが、武島将のモチベーションは次元が違うのだ。敵役ではあるが、悪人として書かれてはいない。

 
「ネトウヨ」という言葉には違和感があると常々思う。
自分が生まれた国って素晴らしいという素朴な思想でさえ、ネトウヨだと思っている人がいる。

そもそも「右翼」と「インターネット右翼」の違いはなんだろうか。
ネット弁慶という蔑みのニュアンスがあるのだろうが、実際に過激な行動を行なっている人もいる。軍服や街宣車を使用しない、カジュアル右翼というのが厳密に正しいニュアンスなのではないだろうか。さらに言えば、インターネットの普及により顕在化した右翼的な需要、これをネトウヨと考えるのが正しいと思う。マスコミがずっと蓋をしていただけで、右翼的な思想の需要はずっとあり続け、それがインターネットの普及で蓋が取れたことにより顕在化したのだ。人種ではなく、現象を指すのだ。

 

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