超羨ましい!鳥山明に三顧の礼をして会った不登校児がいた!棚園正一「学校へ行けない僕と9人の先生」 [名作紹介]
なんかのキッカケで、不登校時代に鳥山明と会った少年の体験が漫画化されていることを知った。タイトルは「学校へ行けない僕と9人の先生」。描いたのは漫画家になったその不登校児、棚園正一。ネットで3話ぐらい読むことができる。学校に行けない理由を、黒いおじさんと表現するところは興味深い。しかしそれ以外は正直あまり引っかかるところのない作風だなと思った。
帯には本書のウリとして、鳥山明の巻末コメントを1600字超えで掲載とうたっており、興味を引かれたので買って読んでみた。
まずタイトルが今ひとつ内容と噛み合ってないと思った。
9人目の先生が鳥山明ということなのだろうけども、それぞれの先生に対して個性や、それを象徴するような印象的な出来事が起こるわけでもない。いま何人めとか意識することもなければ、次はどんな先生が出てくるんだろうとワクワクすることもない。周りの大人は平凡にボンヤリと存在し、ただただ漠然とした作者の不安感の方に重点をおいて作画がなされている。
読んでいて、誰が悪いわけでもないけども、誰もどうやって助けたらいいかわからない、そんな無力感を感じる。単なるキッカケだったのかもしれないが、不登校のキッカケになるビンタをした先生はこれを読んだら相当苦しむだろうなと思う。
鬱々とした展開が続き、終盤ではファンだった鳥山明の原画展に行くシーンがあり、一気に癒された気持ちになる。やはりリスペクトという感情が世界で一番美しいと思う。最後は紆余曲折を経て鳥山明に出会って終わるのだけれども、読んでいて嗚咽する寸前ぐらいにまで泣いてしまった。やはり世代であるから、鳥山明に出会うということがどんなに嬉しいことであるのか気持ちはすごいよく分かる。
平凡な作風ではあるのだが、鳥山明に会わせるために尽力してくれた人を、綺麗に全くの善人に描いてないのは面白い。その人はいわゆる押しが強く、エネルギーに溢れ、あまり人の気持ちなど気にせず、良かれと思ってアレコレ行動してしまう。断られたものの新聞記者を帯同させようとするなど、鳥山明と主人公を会わせたのも売名のニュアンスがあることをハッキリと描いているのがすごく面白い。ただし、その売名によって、作者のような不登校児を救うリターンがあるからこその発想であり、本人にやましいところは一切ないのだろうと思う。新聞記事にするのも、漫画化して出版するのも大差はない。
で、鳥山明のコメントなのだけれども、あまり表に出たがらない理由をあれこれと書いていて非常に面白い。ちなみにどうやって作者との出会いが実現したかというと、直接家に三顧の礼でお願いしに行くという、超ど直球方法。鳥山明が面会を承諾したのは特例中の特例で、普段であれば仕事に支障をきたすため、どんな理由であれお断りするとハッキリとあとがきに書いている。なぜ今回に限りOKだったのかというと、仲の良かった同級生の子供だと知ったからだそうだ。
俺だって死ぬまでに一度は鳥山明に会ってみたい。
でも無理だから、年々少なくなる近況報告をありがたやありがたやと眺めるしかない。そんな人は多いと思う。そんな人にこの「学校へ行けない僕と9人の先生」は必携のファンアイテムになるのではなかろうか。
2018-09-04 10:44
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0