どっちが鶏でどっちが卵？あなたが知らない本宮ひろ志の「ゴールデンボーイ」：ムゲンホンダナ（本棚持ち歩き隊!!）：SSブログ

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どっちが鶏でどっちが卵？あなたが知らない本宮ひろ志の「ゴールデンボーイ」　[名作紹介] [編集]

以前、Kindle読み放題で発掘した古いけど面白いボクシング漫画、山本まさはるの「ゴールデンボーイ」。その本宮ひろ志版を購入した。

これが本宮ひろ志？？？と驚く絵柄。
かなり山本版に似せてきている。リスペクトの表れか？山本の原作に惚れ込んだ本宮がリメイクと書いていたサイトがあった。しかし本宮版の表記は「合作」となっている。リメイクであれば「原作」の表記が正しいように思える。「合作」であれば、立ち上げから２人で行ったというニュアンスに聞こえる。ちなみに山本版には合作の表記がない。掲載時期などの記載もないので正確なところはわからないのだが、やはり山本版がオリジナルなのではないかと思われる。

気になって、本宮ひろ志の自伝、「天然まんが家」を購入して読んでみた。若くてお金がない頃、立ち読みで読破した思い出の一冊である。確かここに山本まさはるの名前が出てきたような気がしたのだ。この本によると、山本は貸本漫画家時代の先輩らしい。本宮がメジャーデビューの重要な時期に、生活苦の本宮に大金を貸してくれたという恩人なんだそうだ。

さらに天然漫画家を読んで思い出したこと、というか、すっかり忘れていたことなのだが、本宮の制作スタイルだ。作画をほとんど弟子に丸投げするのは知っていたが、思っていたよりもかなり早い段階でそういうスタイルに落ち着いている。おそらくこの時期も弟子に任せている比重は高いと思われる。独立したチーフアシの絵柄が師匠に似すぎていて使えないと編集部からクレームがくると、チーフが変わったのでこっちの絵が変わるから問題ないと答えた本宮である。そう考えると、リスペクトから絵を似せてきてる感はなくなる。ただ、少女漫画のスタイルを取り入れたのはあだち充より先とも公言していて、女性キャラクターの裸は少女漫画家の嫁に描かせていた。こだわりが無いということもないのだろう。山本版に似せるよう、指示はあったのかもしれない。

細かな違いに本宮の「ここはこうした方が良い」という意図が見え隠れして面白い。
ちなみに一番大きな違いは構成である。山本版は１巻で主人公を。２巻でライバルのみを描き、ザッピング感があって古い漫画なのに新鮮だ。しかし本宮版は冒頭にライバルの生い立ちを持ってきていて、いかにも漫画っぽい王道的な表現手法だ。山本版で第２ヒロインのよく分からない心理描写があるのだが、本宮版は非常に分かり易い。