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石ノ森章太郎最高傑作かもしれない「幻魔大戦」を読み返す [名作紹介]

子供の頃に夢中になって読んだ「幻魔大戦」を再購入。
やはりサンデーコミックス版でしょと思ったが、読んでみると画質がすんげえ悪い!
1巻が昭和49年の24刷。2巻が昭和51年の25刷。昔読んだのもこんなに悪かったのかな。

ゆびきりげんまたいせん1.jpg

ツイッターで情報をいただき、
画質が良く値段も手頃な扶桑社文庫版を再購入してしまった。
ベタのムラまで見えるかもしれない高画質!

ゆびきりげんまたいせん2.jpg

問題のサンデーコミックス、さらに調べてみたら、
もはや画質が悪いというレベルじゃない箇所まで見つかってびっくりしている。

話を漫画に戻す。

いやはや面白い。
予知夢のシーンとか最高じゃないですか!

ゆびきりげんまたいせんb1.jpg

ラストの見開きも、
「雪の峠」「男坂」に匹敵する、漫画史に残る見開きと言っていいと思う。

ゆびきりげんまたいせんb2.jpg

またキャラクター造形が深い。

根性あって努力家だけど才能に恵まれず、
勢い余って説教した友人に部活のポジション争いで負けたり、
フィジカルで勝る弟に兄弟喧嘩で負けたりして鬱屈する主人公。

超能力に目覚め、スカウトにきた異国のお姫様に騎士然として振る舞うも、
「みじめったらしい野ねずみ」と軽蔑されてしまう。
すげえ口悪いヒロイン!

みじめったらしい.jpg

そんなお姫様も、参謀のサイボーグのベガから
「あなただってわがままな小娘にすぎませんよ」言われて、泣いて逃亡。

みじめったらC.jpg

ベガはベガで超合理的精神で、
「これが戦争なのだよ」と、超能力なくしてただの小娘になってしまったお姫様を無慈悲にリストラしようとするので、「人の心とかないんか」と仲間からドン引きされる。

ゆびきりげんまたいせん3.jpg

そんな奴らが団結して世界を救えるのか?
幻魔大戦はそういうお話。
めちゃくちゃ面白い。

「敵勢力に仲間割れさせるのが幻魔大王の最も得意とする戦法ですからな」
トサカ.jpg

しかしお話は単行本2巻で唐突に終了。
諸説あるが、読者の支持が得られなかった説と、編集長とケンカした説があることから、
人気がなくて編集長とケンカになって打ち切りになったのではないかと思われる。

あの「サイボーグ009」ですら当時は不人気打ち切りで、単行本の爆売れで初めて商業的価値を認められたという。
ありそうなことである。

あまり詳しく覚えていないが、
子供の頃に石ノ森作品が山ほど段ボールに入ってうちにやってきたことがある。

その中に「新幻魔大戦」だの「幻魔大戦 神話前夜の章」があって、
あの続きが読めるのだと狂喜したのだが、
どこを探してもその中にはベガも丈もルーナもおらず、相変わらずよくわからんラスト。
なんならその中に入っていた石ノ森漫画もわけわからんものばかり。

私は一週ごとに漫画家たちが生き残りのバトルを続ける少年ジャンプアンケート至上主義の漫画で育っていたので、石ノ森章太郎の巨匠然とした余裕を感じる自由な作風が肌に合わず、どちらかというと嫌いな漫画家に分類するようになった出来事だった。

映画版も思い出深い。最近になるまで本編は見たこと無かったけど。
CMをジャンジャン投入して洗脳してしまうかのような角川商法の最初の洗礼だったのだ。
絵が違うのがたまらなく不思議だった。特に大好きなベガのデザインが違う!

ところでベガのデザインは天野喜孝永井豪
寺田克也から村枝賢一までさまざまなデザインがあるらしい。


幻魔大戦を今読み返すとジョジョっぽいところがある。
世界中から超能力者が集結して戦う漫画だ。そりゃ似ることもあるだろう。
ベガとアブドゥル(顔の模様と参謀的立ち位置)、フロイとイギー(砂を操る犬)、東丈と東方仗助。ジョー東ってキャラクターもいたな。
学生帽の後ろのハネは承太郎っぽい。


調べていたら、
2014年からウェブ漫画として正式な続編が描かれていたことを知る。
単行本全11巻。作画は早瀬マサトと石森プロ、脚本は七月鏡一。
そちらも購入してみたので、そのうち感想を書きたい。

 


幻魔大戦 Rebirth(1) (少年サンデーコミックススペシャル)

幻魔大戦 Rebirth(1) (少年サンデーコミックススペシャル)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2017/05/02
  • メディア: Kindle版



千値練幻魔大戦ベガ

千値練幻魔大戦ベガ

  • 出版社/メーカー: ノーブランド品
  • メディア:



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今なお水木しげる完コピを目指す漫画家、村澤昌夫「水木先生とぼく」 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]


水木先生とぼく (角川文庫)

水木先生とぼく (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/06/10
  • メディア: Kindle版


村澤昌夫「水木先生とぼく」を購入した。
とにかく背景絵の緻密さがすごいのだ。

みずきせんせいとぼく8.jpg

拡大するとこんな感じ。
「うわーッ」の文字のちょい上あたり。

みずきせんせい.jpg

この漫画は特にヨーロッパに渡ってからの作画が過剰すぎる。
こんなのネットでは伝えきれない。ぜひ紙の本を手に取っていただきたい。

みずきせんせいとぼく6.jpg

こういう高度に発達しすぎたプロアシの仕事は美術館に飾ってもいいのではないかと思う。
どれぐらいの時間をかけているのだろう。
商業誌ペースなのだから、スピードもあるはずだ。

みずきせんせいとぼく5.jpg

村澤昌夫「水木先生とぼく」は、
水木プロダクション所属の漫画家による、水木しげる回想録だ。
人物なども水木しげるそっくりに描かれている。
 
BS漫画夜話の「悪魔くん」回を見ていて、いしかわじゅんが水木しげるについて、
「作者そっくりに描けるアシを何人か抱えてる」みたいなことを言っていた。
その時、いしかわが提示したのが元水木プロの森野達弥の作品。



なるほど、映像はボヤけているがそっくりだ。
そもそも自分はホラー系が苦手なので、それほど水木作品は読んだことがないのだが、
お気に入りの「カランコロン漂泊記」も水木本人の筆じゃないのかもしれないと思うと、ちょっとショックだったりもするのだった。

しかしですね!
トシとって目をやられて絵が劣化していくのは自然の摂理であるわけで、
師匠そっくりに描ける弟子を育成しておくのは大事なことなんじゃないかなとも最近思うわけです。

そんな感じで、
水木漫画を読んで「オレだったらもうちょっと似せて描ける」と思った人がいた。
それが「水木先生とぼく」を描かれた村澤昌夫なのである。

みずきせんせいとぼく1.jpg

水木先生曰く、「彼は当たり」

みずきせんせいとぼく2.jpg

あんな作画が過剰だから、
水木さんは「浮浪雲」を読んで背景を簡略化することも考えたそう。
それについて村澤氏は反対したという。

みずきせんせいとぼく3.jpg
そもそもデフォルメされたキャラクターに対し、背景を描き込むことで商業作品として成立させているというのは作者本人や批評家も認める水木スタイルであるらしい。

作中にも登場する京極夏彦の巻末解説によると、
村澤氏は水木タッチを完全再現するための研究に今なお余念がないという。

似てないと言いたいわけではないが、村澤氏のタッチは見覚えがある。
以下の「中古(ちゅうぶる)」、これは村澤氏の作画ではなかろうか。
いしかわじゅんの発言を聞いて以来、若干注意深くなっていたから思ったことである。

 
他にもこの漫画の見どころとして特に推したいシーンが、
つげ義春一家が出てくるところである。
つげ漫画でお馴染みの藤原マキさんがカメラ越しに水木先生に挨拶する。

みずきせんせいとぼく7.jpg

マキさんの「私の絵日記」を読んで、亡くなられてしまっていたことにショックを受けた。
この本についてもいずれ書きたい。

 

私の絵日記 (ちくま文庫 ふ 46-1)

私の絵日記 (ちくま文庫 ふ 46-1)

  • 作者: 藤原 マキ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫



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エロが無い国の50年ぶりヌードデッサン会。李昆武「チャイニーズ・ライフ」 [漫画の描き方が書かない漫画の描き方]

50年ぶりにヌードデッサン会が!

1980年、改革開放路線に舵を切った中国。雲南省でヌードデッサン会が催される。
「我が国では1930年代に上海で行われただけだ。」というからすごい。
その様子が傑作漫画「チャイニーズ・ライフ」下巻に描写されている。

ラフゾウ1.jpg

「チャイニーズ・ライフ」の作者である李昆武(リー・クンウー)はこのデッサン会に参加し、
当時の様子を回想しているのだが、彼がページを割くのは色々口実を作っては現場に入り込もうとする校長先生の姿。李昆武の作家性、人間を見つめる目がどこに向いているのかを象徴するシーンであり、面白いと思う。

ナイトライフ6.jpg
左が校長先生。

結局、校長のせいでデッサン会は中止。
諦めきれない李昆武は婚約者にヌードモデルになってくれるように懇願するが、
「二度と顔を見たくない」とドン引き&絶縁宣言されてしまう。

が、次のページをめくると二人が婚姻届を出すシーンになっている。
復縁シーンは描写されていない。この唐突さはフランス漫画の文法なのだろうか?
二人は結局、子供一人作ったあと離婚してしまうのだけれども。

 
エロ絵のない世界、中国。
そんな世界を目指すツイッターフェミニストの理想郷であるが、
もちろん性犯罪は現在でも普通に多いらしく、最近それで日本に逃げてきた中国人女性のニュースを見た。
エロマンガを撲滅しても、フェミたちの戦いはこれからだ!となることはとりあえず間違いない。

性への興味は人類普遍のものである。人間そのものだ。
興味が行きすぎてトラブルを起こしてもいいわけはないが、
それを描かない、人体構造の研究すらできないでは面白い漫画など描けるはずがない。
漫画を潰してもエロは無くならないが、エロを潰せば漫画は死ぬのである。

ところで最近、
「映画や漫画に無理やり恋愛要素入れるな」というツイートが多くの賛同を集めたのを見た。
まあ取ってつけたような恋愛要素は無しにしても、硬派一直線も考えものだ。
恋愛への興味は人類普遍のものである。人間そのものでエロにも繋がっている。

アオイホノオでも語られていたが、
マニアは序列を逆にして、ご新規さんを遠ざけてるのに気づかないからジャンルを潰すのだ。
みんなリラックスするために作品を読むのを忘れてはいけない。
徳を高めるために漫画を読む変態はごく少数。

ちがうちがうそうじゃない.jpg
ちなみにアオイホノオの島本先生と李昆武は面識がある。

この「チャイニーズ・ライフ」は出版側の要望として、
「恋愛と家族の話も忘れちゃダメよ」と言っているのは実に的確なアドバイスだったと思う。

ナイトライフ1.jpg
 
さて「チャイニーズ・ライフ」は、
文化大革命の時代を生きた親子二代のチャキチャキの中国共産党員の自伝漫画である。
文革のシーンはまるでデビルマンだ。

「うわっ!なんてわいせつなんだ!」

「ひどい!なんでこんなもんが描けるんだ!」

ナイトライフ2.jpg

裸婦像やギリシア彫刻はワイセツだと焼かれ破壊され、みんなハイになってしまう。

「封建社会を打倒せよ!」

「反動主義者を一掃せよ!」

ナイトライフ3.jpg

この歴史的キャンセルカルチャーに参加した作者は回想する。

ああ自らを狂気に委ねることはなんと気持ちのよいことだろう
昨日まではみすぼらしい無数の水滴の集まりにすぎなかったのに、
今日はすべてを洗い流す激流になるなんて。
誰も我々を止めることができませんでした。
あらゆる時代の貴重な品々を葬り去りました。
目に見えない塵となって飛び散り、私たちの若い胸を満たしたのです。

(中略)

他の人たちと同じで、後悔が募るだけなので、私はあまり昔を思い出さないようにしています。
本当のことを言えば、若さゆえの無知で多くの貴重な文物を破壊した人間は、今日、より歴史的な品々を探し求めているのではないでしょうか。
 

中国共産党に忠誠を誓う李昆武のお父さんですけども、
時々やばい方に暴走する息子やその友達を見て不安になり、昆武を画家にあずけ絵の勉強をさせる。

こういうのをプロレタリアートというのだろうか。
昆武はそこで毛沢東の絵をひたすら描かされ腕を磨くのであるが、ある日ふと集中力が切れ、先生不在のアトリエで作品を物色していると、そこに裸婦デッサンが隠されていたことに気づくのであった。きゃー、やめてー。

ナイトライフ4.jpg

子供が親を密告した時代である。
昆武がチクれば画家先生はただではすまなかっただろう。
吊し上げられて自己批判させられて下手したらリンチされて殺されてたまである。

ツイッターフェミニストさまが役所に集団で押しかけ、担当者に罵詈雑言を浴びせかけてるニュースを見ていると、将来の日本にもそんな日が来ないとも限らないと思うのである。

ところで、
日本でもかつて裸婦の肖像がワイセツだと社会問題になったことがあった。
明治28年の黒田清輝「朝妝(ちょうしょう)である。
博覧会のような多くの人が出入りする場所に春画を飾るなと新聞にも書かれた。

芸術を理解しないのはけしからんと、この事件を漫画にした漫画家がいた。
作品が歴史教科書にも引用される大物、ジョルジュ・ビゴーである。
日本の女は雨が降ると裾をまくって足をあらわにするだろ?そっちの方がワイセツだよ!
というメッセージを漫画に込めた。

ラフゾウ2.jpg
(参考:清水勲「近代日本漫画百選」

どうも日本人は昔も今も、同じようないさかいを繰り返しているようである。
でも忘れてしまうのだ。あまり興味がないのかもしれない。

 






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いつか行きたい「3つのおかず」。李昆武「チャイニーズライフ」の舞台を探す。




引き続き「チャイニーズ・ライフ」という漫画の素晴らしさを語る。

同じ間取りの社宅を、同じような構図で描いて、
それぞれの生活感の違いを表現しているところがわかりやすいだろうか。

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3つのおかずb2.jpg

3つのおかずb3.jpg

とくに猫ちゃんがいい。
ただ、ネットの小さい画像では伝わらない気もする。
ぜひ紙の本を手に取っていただけたらなと思う。

よく見ると、ワンルームなのである。
住宅事情はあまり良くなかったようだが、悲壮感はあまり無い。
アメリカ人から見た日本の住居がウサギ小屋と言われるのと同じようなものかも。
年代的には1970年代ぐらいと思われる。
 
そういえば最近、
中国でミネラルウォーター会社が不買運動にあってるというニュースを見た。
ペットボトルの赤いキャップが日の丸っぽい、親日企業だ!という非常に知的極まりない理由だ。
その会社の社長は中国一の資産家として知られ、財産は九兆!Σ(°Д°;
経済の行き詰まりがささやかれる人民の不安の表れではないかとも思う。



「チャイニーズライフ」にもミネラルウォーターの会社の社長が登場する。
その社長さんは非常に良い人なので、不買のニュースを聞いた時この人の会社だったらどうしようと不安になったのだが、どうやら違ったようで安堵した。それにしてもミネラルウォーターって儲かるんだな。まさに水商売だ。

ところで、
李昆武(Li Kunwu)の「チャイニーズライフ」以前の代表作は「雲南18怪」
雲南省の珍しい風習をイラスト化したもので、以下のサイトで見ることができた。
https://oka-ats.blogspot.com/2012/08/oka01-qfobcfyxzifaeset.html


昆武と知り合いになったミネラルウォーター会社社長は、
自社製品のラベルに「雲南18怪」をプリントすることを思いつく。

3つのおかず3.jpeg

このミネラルウォーター、
探せば見つかるかなと調べてみたら、発見できた!感動!
https://ethnicsuzuki.com/unnan18kai/

3つのおかず4.jpeg

昆武とミネラルウォーター社長の出会の場となったレストラン、「3つのおかず」も見つけた。
作中で、クズ鉄拾いでお金を貯めた夫婦が開業させて大成功したレストランだ。
http://siusam.net/archives/9023923.html

3つのおかず.jpeg

なかなか中国旅行は難しいけれども、
この「3つのおかず」にはぜひ一度行ってみたいなと思っている。

3つのおかず2.png

「チャイニーズライフ」の舞台となる雲南省に興味が湧いた。
中国の、うんと南の方にあるようだ。

映画で何かないかなと調べてみたら、「単騎、千里を走る。」という映画が出てきた。


単騎、千里を走る。 [DVD]

単騎、千里を走る。 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2006/09/22
  • メディア: DVD

高倉健主演で、2005年の映画。
話題作だったので存在は知っているが、地味そうで敬遠していた。
監督は、田舎の素朴な恋愛を描いた「初恋のきた道」で有名なチャン・イーモウ。
こっちは見たことがある。

「単騎、千里を走る。」は、
余命いくばくもない息子と和解するために、息子の念願だった名人芸を撮影しに中国の雲南省に行くという話。
さまざまなトラブルに遭うが、雲南省の人たちが親身になってくれたことで、息子が求めていたものは名人芸ではなく、もっと別のものだったと気づくというオチ。

いい映画だった。
リアリティ重視の芝居で、だらだら喋っているのだが退屈しない。
その場に自分も参加しているかのようである。

この映画に出てくる雲南省は田舎である。
1998年制作の「中国の鳥人」という映画も舞台が雲南省でやはり田舎だった。
チャイニーズライフを読んで、日本の漫画家が一時期もてはやしていた人民服を着た中国人たちがその時期にかなり貧しかったと気づいて驚いたのだが、その辺が確認できた。

陳腐な解釈をすれば、「単騎、千里を走る。」は
「田舎っていいよね人情があって、それに比べて都会は」という映画だということだ。
TVでよくある発展途上国に行って、寄ってきた子供たちを見て、「子供たちの目が死んでない!キラキラしてる!」とかいうのが俺は嫌いだ。それは貧しさから来る娯楽の少なさ、余暇の多さでもあるからだ。

ではあるのだけれど、日本からやってきた一人の中年を歓迎するために、
村をあげて一列に机を並べ、飯を食うという「単騎、千里を走る。」のワンシーンは言葉にならない感動がある。その光景をフィルムに残したのがこの映画の価値だ。
 

それからたった20年でとんでもない経済成長を遂げた中国。
現在の雲南省はどうなっているのか。
YouTubeで探して見つけた動画では、とんでもなく発展してる。
国土が広いので、都心を離れるととんでもない田舎も残っているのだろうけども。



1980年に日中漫画家交流で中国の漫画家が来日した際、こんな文章を残している。

3つのオカズ.jpg

日本の漫画家と中国の漫画家はそれぞれ社会制度の異なる国にいます。簡単に比較はできないと思いますが、例えば彼等の生活水準は、一般的に我々より高いでしょう。しかし、その生活水準を維持してゆくため、厳しい仕事をこなしていかなくてはならないのです。我々の生活水準は低くても、基本的な生活を送れる賃金が約束されています。几帳面にするか、怠けてするかは自分で決めることです。本当のところ私は怠け者ですので、日本の漫画家の忙しさには恐れを抱いてしまいます。ある晩、京都のフランス料理のレストランで、鈴木義司さんが感慨深げにこういいました。「中国の漫画家はいま一歩テンポを速めて、日本の漫画家はもう少しのんびりやればちょうどいいんじゃないの」私は、はっとしました。彼はきっとこの資本主義社会の緊張感を少し緩めたかったのでしょう。逆に私は、社会建設のために我々はもっと歩調を速めなければならない、と思ったのです。「世相漫画で知る中国」より)

 
「チャイニーズ・ライフ」の作者の結論は、
「人権より秩序と経済発展」という、とんでもないものだったことを思い出す。
人権大国フランスで発表した作品でこの結論が許されるというのは、その筆致の凄まじさによるところが大きい。あと悲しみだ。

「チャイニーズ・ライフ」はそういう現実を知らされる傑作中の傑作だと思うのである。

 




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ニセ札犯から転身した漫画家、赤瀬川源平という人がいた!Σ(°Д°; [あの人は今]

偽札犯から漫画家に転身した人がいたと知った。
この年になっても漫画は知らないことばかりだ。
偽札犯の名前は赤瀬川源平(あかせがわげんぺい)という。

まずその存在を知ったのは「現代漫画博物館1945-2005」という本。
終戦直後から60年間、漫画史に残る750タイトルを選び紹介する内容だ。
偽札犯、赤瀬川源平は1970年を代表する20本の中に「櫻画報」(さくらがほう)で選ばれている。
菫画報の元ネタ?


現代漫画博物館

現代漫画博物館

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/11/07
  • メディア: 単行本

その櫻画報を紹介するために引用されたコマは、つげ義春「李さん一家」のパロディ。

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紹介文を読むと風刺漫画っぽい。
「文藝春秋漫画賞の47年」を調べてみたが受賞もノミネートもない。

ただ「孤独のグルメ」の久住昌之が1999年に「中学生日記」で受賞した際、
「赤瀬川源平に師事」と書かれていたことから、赤瀬川源平がそれだけ高名な人だというのは伝わる。美学校の講師をしていたらしい。

さらにウィキを調べてみて、
赤瀬川源平が「表面だけの千円札」を作ったとして、有罪判決を受けたと知ったのである。

厳密にいうと偽札犯では無く、「紙幣と間違える紛らわしいものを作った罪」なのではあるが、色々込み入った話なので簡潔にさせていただく。本人も「千円札を印刷したら起訴されて有罪になっちゃいました」と書いているし。

要するに赤瀬川源平は前衛芸術家なのだ。

千円札裁判終了後、弁護した瀧口修造に赤瀬川がお礼に送った千円札オブジェが4分18秒に登場する動画。


赤瀬川源平は執行猶予になった後、つげ義春「李さん一家」を読んで深い感銘を受け、「ガロ」で「御座敷」という漫画を発表。同誌の人気漫画家だった佐々木マキが推薦されて朝日ジャーナルで作品を発表し、手塚治虫以外に好評だった流れで赤瀬川源平にも朝日ジャーナル連載のオファーがくる。

そこで赤瀬川源平は前述の「櫻画報」を始めるのだが、その中で朝日新聞を揶揄する漫画を描いたことが上層部で問題になり、掲載号は回収され2週間の休刊、編集長は更迭、61人が人事異動を喰らう大混乱をもたらした。すごい風刺であり、アートだと思う。

アカヒガワげんぺいb1.jpg
ルバング島に潜伏していた日本兵も「偏向しとる」と思ったぐらい朝日はアカイのである。

この「櫻画報」の文庫版を購入してみた。
本の冒頭、序文が終わったらまた序文が始まるのを繰り返す。
計4度、18ページにわたって、新装版が出るたび書いた序文を収録しているのだから人を喰っている。


櫻画報大全

櫻画報大全

  • 作者: 赤瀬川 原平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1985/10/01
  • メディア: 文庫

コンセプトは櫻画報そのものが本体の独立した雑誌であり、
掲載誌の朝日ジャーナルは包み紙にすぎないというものだ。
その中でゼロ円札を有料で交換するということもやっている。
欄外の煽りの、「善は急げ!悪も急げ!!」がなんかツボ。

アカヒガワげんぺいb2.jpg

肝心の漫画の内容であるが、正直よく分からない。
コマ漫画というより、グラビア漫画といった感じだ。
絵柄は水木しげるっぽく、かなり上手い劇画タッチだと感じた。

ちなみに水木しげるのアシスタントが描いた「水木先生とぼく」にも、
赤瀬川源平が水木プロを来訪する客として、つげ義春らと一緒に登場する。

アカヒガワげんぺいc.jpg
(中央が赤瀬川源平)

櫻画報だけだとよく分からないので、赤瀬川漫画の代表作としてよく挙げられる「御座敷」「おざ式」を読まないと肝心なことは分からないと思ったので、大枚はたいて「赤瀬川源平漫画大全」を購入。赤瀬川源平が亡くなった翌2015年に出版されたもので定価が2800円。中古相場はその倍だ。


赤瀬川原平漫画大全

赤瀬川原平漫画大全

  • 作者: 赤瀬川 原平
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/10/24
  • メディア: 単行本

デビュー作「御座敷」は良かったが、テンションはそこがピークだったと感じた。
やはり本業は芸術家で、そこまで漫画にのめり込むというほどのものでは無かったのだろうと思う。

アカヒガワげんぺい3.jpg

こち亀でも出てくる「トマソン」を始めたのも赤瀬川源平だったというからすごい。
他にも「老人力」を流行らせたり、
今でいう、みうらじゅんみたいな人なのだ。
 
アカヒガワげんぺい2.jpg
 
とりみき「トマソンの罠」という短編にも赤瀬川源平の名前が。
トマソンの罠.jpg


超芸術トマソン (ちくま文庫 あ 10-1)

超芸術トマソン (ちくま文庫 あ 10-1)

  • 作者: 赤瀬川 原平
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1987/12/01
  • メディア: 文庫



と、そんなことをやってる折、
他にも漫画史を調べている過程で、そろそろ読まねばならないと思った本が出てきた。
風刺漫画で投獄されたりした宮武外骨(みやたけがいこつ)を紹介した本、「外骨という人がいた!」である。


外骨という人がいた: 学術小説

外骨という人がいた: 学術小説

  • 作者: 赤瀬川 原平
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1985/03/01
  • メディア: 単行本


この本、小学生ぐらいの頃に父から「面白いから読め」と勧められていたが、文字だけの本が苦手なので読まずにいた。しかし「外骨」という名前のインパクトは、ずっと記憶に残っていた。

購入の際、「外骨という人がいた!」の著者が赤瀬川源平だったのでビックリした。
こんな昔から俺は赤瀬川源平に触れていたのか!
櫻画報にも宮武外骨の滑稽新聞の引用が多数あったので気になってた。

ちなみに赤瀬川源平は直木賞作家でもある。
実家の居間の壁一面を本棚にしたほどの読書家の父が赤瀬川源平にどういう印象をもっていたのか興味深いが、数年前に死んでしまっているので聞くことはできない。

「外骨という人がいた!」は面白く、
全25巻で定価20マン以上する宮武外骨全集を散々悩んで購入してしまった。

親父も読みたかっただろうなと、その中の数冊を仏壇に供えたのだが、
そのせいか夢の中で親父から「迎えに行く」とメールがきたので、ここ数日死なないようにしている。

アカシェがわ.JPG


赤瀬川原平: 現代赤瀬川考 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

赤瀬川原平: 現代赤瀬川考 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: ムック



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横山光輝の魂の還る海、神戸須磨海岸に実際に行ってみた。 [心に残る1コマ]

鳥山明が亡くなった。68歳。不意打ちすぎる訃報だった。
そんな鳥山明が愛した「鉄人28号」を描いた横山光輝が亡くなったのは69歳。

横山の死を予見したかのような漫画「闇におどる猫」に描かれていた、どこかで見た海。

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その海は自伝的作品、「まんが浪人」にも描かれていたのと同じ、横山故郷の神戸の須磨海岸だった。
人生に少し疲れた時、横山がつい戻りたくなる場所。巨匠の魂の還る場所、須磨海岸。

やみにまぎれて生きる猫8.jpg

ぜひ一度見てみたいと思った。

光源氏も都を追われ、須磨で過ごした時期があるらしい。
「源氏物語」は、その須磨編から書き始められた説があるという。

須磨観光施設協議会のページにはこう書いてある。
八月十五夜、琵琶湖の水面に映る中秋の名月を眺めて、光源氏のモデルの一人在原行平(ありわらのゆきひら)の須磨での日々と重ねあわせながら、「須磨」「明石」の両巻から書き始められたとも言われています。

神戸にある須磨海岸はけっこう遠く、俺からしたら気軽に行ける距離ではない。
数ヶ月先になるかなと思っていたら急遽予定が空いてしまったので行ってまいりました。

スマスマ須磨3.jpg

そしたらめちゃくちゃオシャレなビーチで驚いた!
スタバムラサキスポーツレッドロブスターも併設。
割と最近大きい工事をしたらしい。

さらに海の綺麗さに衝撃を受けた。
肉眼でこんな綺麗な波打ち際を見たのは初めてだ!
沖縄でなくてもこんな透明な海って日本にあるんだと思った。
めちゃくちゃテンション上がった!

スマスマ須磨4.jpg
画像クリックでツイッターで動画が見れます)

<追記>
The Beach Boysも 浜の美しさに感動して、「Sumahama - 想い出のスマ浜」という曲を作ったそうです。リプで教えていただきました。すごい!
https://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11356692679.html

スマハマ.jpg

官民一体となって、かなり気合を入れて須磨海岸を管理しているらしい。
そりゃ横山光輝も還りたくなりますわ。
あの漫画に出てきた壁はなかったけど、どこかにあるのかな。

やみにまぎれて生きる猫3.jpg

せっかくの聖地巡礼なので、
「まんが浪人」の表紙を再現してみた。
はしゃいですみません。須磨だけにスマン。

スマスマ須磨1.jpg

実は須磨海岸は、反骨のブラックジョーク漫画ジャーナリスト・宮武外骨がネタにしたこともある場所。
赤瀬川源平の解説によると、これはかなりしょうもない下ネタだそうですが。
余談ですがこの旅に「赤瀬川源平漫画大全」を持ち歩きました。

スマスマ須磨10.jpeg

せっかくの遠征なので、
以前から一度見てみたいと思っていた実物大の鉄人28号のモニュメントも見てきました。
須磨海岸から東に2kmほどの場所にあります。

で、デカい!

スマスマ須磨2.jpg

横山光輝もよくコメントしているように、漫画の中の鉄人のサイズは自由自在。
いくらなんでもそんなにデカくないだろうというぐらいデカくなる時もあるのですが、
鉄人のモニュメントはそれよりさらにデカいイメージ。

今川ジャイアントロボぐらいあるのではないか。
ちなみに原作まだ読破できてない。

そこから少し北上して横山光輝が育った街並を散策し、喫茶店で小休憩。

きた道を戻って、鉄人モニュメントのすぐ近くのアーケードを南下して「KOBE鉄人三国志ギャラリー」を見学。入館料100円。貴重な三国志コレクションを見たり、グッズを購入することができました。

スマスマ須磨7.jpg

50kgはあるという青龍偃月刀を持ち上げる体験コーナーがインパクトあった。
いくらなんでもこんなに重くはないだろうとは思ったのですが、
これ振り下ろされたら間違いなく漫画みたいに真っ二つだろうなという説得力を感じました。

他にも巨匠ゆかりの土地はたくさんあるのですが、取り急ぎこんな感じで巡ってみました。
なんかいいとこらしいという話はよく聞いてましたが、そんな神戸をついに訪れることができて良かった。
あまり関係ないですけど、小島秀夫の「スナッチャー」は未来のネオ・コウベが舞台でしたね。

これからという方の参考になるかどうか。簡単ではありますが地図を作ってみました。
クリックするとツイッターアカウントからさらに拡大して見ることができます。
スマスマ須磨8のコピー.jpg

ご飯は鉄人モニュメントの近くのアーケード入ってすぐにある
「中国料理 新長田一貫樓」はいかがでしょうか。これぞ料理の鉄人!

スマスマ須磨5.jpg
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文化大革命を体験した漫画家の自伝、 李昆武「チャイニーズ・ライフ」 [名作紹介]




日本よりも30年も早く週刊漫画誌が誕生したと言う中国。
そんな中国漫画がなぜ衰退したのかを探っている日々。過去記事参照のこと。

「チャイニーズ・ライフ」なる漫画を購入してみたが、めちゃくちゃ良い。
今年これ以上のものが読めるのかというレベル。

なんと親子二代で中国共産党員の漫画家の自伝だ。
文化大革命などを過ごした描写はもう「デビルマン」に匹敵する。
それでいてどこかユニークなのだ。

ぶんかく3.jpg
これが自己批判ってヤツですか

「チャイニーズ・ライフ」はしっかりした劇画になっていて、違和感なく読み進められるのも驚き。
中国はこんなレベルの漫画が溢れているのだとしたら大いに認識を改める必要がある。

が、「チャイニーズ・ライフ」の後半で、
外国の漫画際に招かれた作者が、世に漫画が氾濫している国があることを知り、
人類が月面を歩いたときレベルで驚いたというから、やはり中国には漫画が少ないのかもしれない。
(情報統制がはかどってるのもわかる)

「チャイニーズ・ライフ」が違和感なく読めるのは、
共同原作者のフィリップ・オティエによるところも大きいのではと思う。
オティエはフランス人で、漫画好きな外交官という異色の経歴の持ち主。

劇中で本作の打ち合わせの様子が描写されているのだが、
そこから察するにオティエが李昆武から話を聞いてネームにし、
どういう絵にするか誘導しているのではないだろうか。

つまりこの漫画は中国漫画というよりは、バンド・デシネなのである。

 
「チャイニーズ・ライフ」の主人公、李昆武(Li Kunwu)は1955年生まれ。

その父は中国共産党内で、地方のそこそこ偉い立場にいた人物。
自分も、国家も、大衆も、とんでもなく愚かで嘘つきあることを悟り、独り想い悩む。

ぶんかく1.jpg
このコマの父の表情が良い

スズメを駆除すれば豊作だと言って逆に害虫の増殖を招いて大飢饉に。
鉄を増産さえすれば一流国だと鍋カマまで溶かしまくってクズ鉄を量産。
溶鉱炉にくべる薪が必要だとハゲ山も量産し、大洪水を巻き起こす。

過度なノルマを課すから生産報告はウソだらけ。
それを信じてまたさらに過度なノルマを課す悪循環。

ぶんかく2.jpg
(王 欣太/李 學仁「蒼天航路」冒頭の1コマ)

作者は回想する。「ユートピアとはこんなところでしょうか」
この時の中国は、意識が高いだけのアホがトップダウンをおこなう実験国家だった。

そんな中国共産党を愛した作者の父は、
地主の家系だったというだけで一時は失脚。
矯正施設に追放されるが、それでも党への忠誠心は生涯捨てなかった。

父は言う。
「党が危機に瀕したときは、家族も友人もないんだ。」
この精神は息子にも受け継がれている。

本書を翻訳した野嶋剛も巻末で解説している。

つまるところ中国にとっては「秩序と安定が経済発展のためには必要」であると結論づけている。

これらは政府の公式発言でなく、内心から出たものであると李氏は語る。なぜなら、中国は「20世紀を通じてあらゆる苦難と屈辱を味わった」国であり、李氏自身も「文化大革命、批判運動、階級闘争、干ばつ、飢饅、電力不足、極貧」などを経験した末に持った考えであり、「発展と再生のために必要な秩序と安定を求める私たちの深い渇望」を理解してほしいと読者に語りかけている。こうした李氏の思考法は、現代中国人の価値観を理解するうえで、私にとって非常に知的な刺激を感じる部分であった。もちろんその意見には異論のある読者もいるはずだ。しかし、李氏の考え方もまた、中国人社会における否定できない現実的な一面であると私は考えている。

人権よりは秩序と発展が大事。
自由を謳歌しすぎるとこの国はバラバラになって崩壊する。

全2巻を読み通すと、そういう考えに至るのもわかるような気がする。
それを正直に人権大国フランスのメデイアで発表してしまうのもすごい。

さらに訳者の野嶋氏は、
愚かな失敗をした過去を綺麗さっぱり忘れて再出発する「チャイニーズ・ライフ」に描かれたような中国人たちの心理を、戦前・戦後の日本人と重ねて分析しておりわかりみが深い。

庶民はたくましい。七人の侍
ナイーブな青年のように自己嫌悪して歩みを止めることはないのだ。
 

おどろくことに中国の黒歴史満載の「チャイニーズ・ライフ」は中国でも出版されている。
おそらく改変されることは避けられないだろうが、この内容が出版されてるのは驚きである。
共同原作者のオティエ氏が外交官のキャリアがあり、刊行当時も中国に滞在していたと言うのが大きいのだろうか。

邦訳版刊行時には日本でも権威ある漫画賞を受賞しており、原作者両氏が来日を果たしている。
島本和彦や沙村広明らと並んで写真を撮っているが、どんな会話があったのか興味は尽きない。

そこから俺の手元に本書が届くまで10年かかった。
欲しい人のところに欲しいものを届ける、なんとも大変なことだと思う。
宣伝は大事。そして難しい。

みなさまには届いているだろうか。

 






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ディズニー+で映像化。ジーン・ルエン・ヤン「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」を読む [名作紹介]

中国人が描いた漫画について色々調べている。

中国系アメリカ人の話というのに興味を惹かれ、
「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」という邦訳コミックを購入してみた。

以下ネタバレあり。


アメリカン・ボーン・チャイニーズ:アメリカ生まれの中国人

アメリカン・ボーン・チャイニーズ:アメリカ生まれの中国人

  • 出版社/メーカー: 花伝社
  • 発売日: 2020/02/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


エッセイ的なものを期待してたのだけど読んでみたらフィクションで少しがっかり。
しかし作者の実体験を基にしたのであろう人種差別エピソードがなかなか強烈だった。
強烈すぎて、作中に仕掛けられたドンデン返しが上滑りしていく。

昔から漫画では、
外国人の中の悪いヤツには「イエローモンキー」と言わせるのが定番だ。

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(画像はみなもと太郎「風雲児たち」17巻。アメリカで差別を受けるジョン万次郎の史実。)

ネットでは、目尻を指で押し上げる侮蔑表現が話題になることが多いが、
その辺も「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」には登場する。
それらは悪役の行為というよりは、さらっと空気のようにさりげなく挿入される。

ほんじつは斉天大聖1.jpg

学校での出来事である。
もちろん注意すべき出来事だけども、
大人の目から見ると「まあ人格も未熟な子供だからこういうこともしてしまうのだろうな」と多少割引いた気持ちで見てしまう。いじめが犯罪にならない悪習慣だ。

だから劇中のアジア系の少年少女たちは詰んでいるように思う。
漫画の中で何か劇的な解決がなされるわけでもない。

 
偽白人にはなるな。
自分のルーツに誇りを持て。
友達を大切にしよう。

大雑把にいうと、そんなメッセージがこの漫画のオチだ。

この漫画はその結論に導くために、
西遊記の斉天大聖・孫悟空が三蔵法師の弟子になるまでのエピソードと、
中国人を極度にステレオタイプにしたキャラクター、チンキーを登場させる。

ほんじつは斉天大聖4.jpg

それがあまり効果的に働いてないように自分は思うのだ。

主人公の親友の台湾人の正体は、斉天大聖孫悟空の息子でである。
悟空は言う。自分が猿であることを認めていたら、人生のトラブルも無かった」(意訳)

黄色人種蔑視をテーマにした漫画にはふさわしくない比喩に感じるのだが、
特にそういうふうに問題視されることなく、この作品はアメリカで高い評価を得ているようだ。
その辺がよく分からない。

そして意図的にコテコテのステレオタイプにした中国人キャラクターのチンキー。
出っ歯で目が細くて弁髪。空気を読まずにはしゃぎまくり、主人公の肩身を狭くさせる。

ほんじつは斉天大聖2.jpg

「チンキーが面白い」と言う感想が時折寄せられ、作者は困惑したという。

分からんでもない。
チンキーはある意味、小林よしのりの描く異形のキャラクターっぽいのだ。

ほんじつは斉天大聖5.jpg

これに対して作者は
「チンキーは面白がられることを意図して登場させたのではありません」
チンキーの出る章は不快に感じるはずです。それこそ私が望んでいた反応なんです。」
とコメントしたと巻末解説に書かれており、ちょっと考えさせられる。

「このキャラクターに対してはこう感じるべき」
あまり聞かない種類の著者コメントに感じる。
正しいニュアンスが翻訳されてない可能性もある。

自分に置き換えてみるとどうか。

自分はオタク趣味の持ち主である。
宮崎事件直撃世代で、学生時代が人生で一番辛い時期だった。
社会に出て、脱オタを図った。

ここからは仮定の話。
そんな自分が所属した社会人コミュニティで、バンダナにチェックシャツ&メガネでデブの典型的なキモオタの旧友と再会したとする。向こうは馴れ馴れしくしてくるが、つい他人のフリ。同族嫌悪に陥ってしまう。

そして自分の前にポルコ・ロッソが現れて森山周一郎の声でこう言う。
「飛べない豚はただの豚だ。」

色々考えてみて、「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」は、
こういうことなのではないかと思った。
抑圧に負けて自分を出せず、なんの人生なのかと。

しかし正確に言えば、私は飛ぶ場所を選ぶ豚であった。
そのことに特に後悔はない。

「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」で否定される偽白人になること、
これって結構手っ取り早い解決策な気がするのだが、あまり読み物でそう言う結論は出しづらい。
もちろん偽白人になることと、脱オタすることは意味がかなり異なる。

言いたいのは、いじめから逃れたいのなら、どんな狡い手でも使うべきだと思うということ。
直接的に他人に迷惑かけない範囲でなら。
こういう結論は「いじめられる側に問題がある」という話に発展しやすいけども。

そういう意味で、アジア人蔑視に苦しむ少年少女は、
「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」を読んでなにか救いがあったのだろうかというのは気になる。
しかしこういった漫画は読んだことがないし、これを叩き台にしてまたジャンルとして発展してゆくのかもしれない。
 
 
文化の違いもあるのか、
「アメリカン・ボーン・チャイニーズ」は読んでいて消化不良を起こす部分がある。
リラックスできるタイプの作品ではないので、日本ではあまり読まれないとは思うが一読の価値はある。
目尻を上げるジェスチャーが醜い行為だと認識を改めさせることもあるだろう。

アメリカではミシェル・ヨーが出演したドラマ全8話がディズニープラスで配信されているらしいので、
ネットフリックスの時のように1ヶ月だけ加入して見てみたいと思う。
内容はかなり改変されてるっぽい。



ディズニープラスといえば、
真田広之の「SHOGUN 将軍」も見ておきたいと思っていたところだ。


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巨匠の魂の還る海。横山光輝「闇におどる猫」 [名作紹介]


横山光輝初期作品集 第6集 闇におどる猫 (横山光輝愛蔵版初期作品集 第 6集)

横山光輝初期作品集 第6集 闇におどる猫 (横山光輝愛蔵版初期作品集 第 6集)

  • 作者: 横山 光輝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/01/23
  • メディア: コミック


横山光輝の「闇におどる猫」を読んで背筋が寒くなった。

鉄人28号が始まった翌年の執筆という、かなり初期の作品。
いい漫画のアイディアが浮かばず弱っていく横山光輝自身が主人公、という珍しい漫画。
内容的には今ひとつピンとこない。猫がおどってない。

タイトルからしてコナンドイル原作の横山作品、
「夜光る犬」みたいな本格ミステリーを連想してしまうせいかもしれない。
実際はホラー漫画。

読んで背筋が寒くなったというのはお話が怖かったからでなく、
現実の横山光輝の死を連想させる内容が次々と展開していくからである。

タバコの火の不始末。(このあと消さずに降車する)
やみにまぎれて生きる猫5.jpg

自宅が火事。
やみにまぎれて生きる猫6.jpg

そして死亡。

 
ところで、
最近あったマンガ原作者死亡のニュースの関連リンクから、
こんな見出しを見つけた。

日本テレビでアニメ化された漫画家 自宅で全身やけどで死去 妹が発見
https://news.yahoo.co.jp/articles/6f58bc80011ab212de91fd712c819c4baa67b4cb

やみにまぎれて1.jpg

誰のことかとクリックしてみたら、横山光輝の死亡記事だった。
2004年の記事がまだあるものなのだな。

「鉄人28号」「魔法使いサリー」 横山光輝さん自宅火事で全身やけどで死去
https://www.daily.co.jp/gossip/flash/20130914330.shtml

【2004年4月16日のデイリースポーツ紙面より】
「鉄人28号」「魔法使いサリー」など多数の人気作品を描いた漫画家の横山光輝(本名光照)さんが15日午後10時29分、死去した。69歳。神戸市出身。横山さんはこの日午前6時10分ごろ、東京都豊島区千早2ノ26ノ14の自宅で起きた火事で全身やけどを負い、意識不明のまま都内の病院へ入院していた。葬儀・告別式の日取り、喪主は未定。

横山さんは「鉄人28号」「魔法使いサリー」以外にも忍者ブームを作った「伊賀の影丸」など多数の作品を描き、91年には「三国志」で日本漫画家協会賞優秀賞も受賞した。

火は横山さんの寝ている2階洋間のベット付近で出ており、目白署はベッド脇に灰皿が置いてあったことから、横山さんのたばこの不始末が出火原因の可能性があるとみて調べている。家の中にいた横山さんの妹2人もけがをした。

横山さんは約3年前に足を骨折し、足が不自由で最近は自宅療養中。普段は母、妹と3人暮らしだったが、この日は別の妹が介護のため泊まっており、横山さんの部屋で物音がしたため確認に行き、ベッドが燃えているのを見つけ119番通報した。

 
ちなみに漫画「闇におどる猫」での横山光輝の死因は、
タバコなどの過剰摂取による中毒症状が引き起こしたノイローゼによる自殺。

やみにまぎれて生きる猫4.jpg

横山の友人らが禁煙を決意する教訓がオチ。

やみにまぎれて生きる猫9.jpg
(左の人物は、かつてノンタン原作者の一人だったオオトモヨシヤス

まさかこの時、
横山光輝が禁煙を決意して描いたとは思えないが、
もし禁煙していたら…と思うと残念でならない。

 
ところで「闇におどる猫」の中で、
精神的に追い詰められてボヤ騒ぎを起こし入院までする横山光輝は友人らに勧められ、
ぶらり途中下車の旅に出る。

やみにまぎれて生きる猫7.jpg

ふと横山は神戸の須磨に途中下車する。
須磨海岸の砂浜に寝そべり海を眺めてリフレッシュする横山。
あれ、このシーンなんか見たことあるぞ…と思った。

やみにまぎれて生きる猫8.jpg

横山光輝の自伝漫画、「まんが浪人」に出てきた海岸じゃん!

やみにまぎれて生きる猫3.jpg
(「まんが浪人」は「横山光輝超絶レアコレクション」に収録されている名作。)

こちらに描かれた横山光輝は、イメージ通りの淡々としたキャラクターだが、
「闇におどる猫」の横山と同様に、須磨海岸に腰掛け、海を眺めている姿が印象的だ。

やみにまぎれて生きる猫2.jpg

横山光輝は神戸市須磨区の出身。
市内の公園には実物大の鉄人28号のモニュメントがある。

漫画の中で横山光輝は、
将来のこと、仕事で悩んだ時に須磨海岸にたたずむ。

やみにまぎれて生きる猫1.jpg

もちろん友達と楽しい時間を過ごす場所でもあった。

 
「闇におどる猫」はフィクションだが、
横山光輝が創作に思い悩む姿はどこかリアルな感じがある。

普段ドライなイメージの横山が、思わず漫画に描いてしまった故郷の海。
ここに良い意味で「弱さ」が表れてしまったのではないか。
そう思うとこの「闇におどる猫」は巨匠の本音が垣間見える貴重な作品と思える。

須磨海岸は横山光輝の魂の還る場所なのかもしれない。

そう思うと一度行ってみたくなる。
何ヶ月後になるかは分からないが、そのうち訪れてみたい。

 
<追記>
実際に行ってみた記事はこちら。

 
タグ:横山光輝
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ドブに沈んだ19歳新人漫画家。豊島雅男「不眠症」 [あの人は今]


「ガロ」編集長―私の戦後マンガ出版史 (ちくま文庫 な 4-1)

「ガロ」編集長―私の戦後マンガ出版史 (ちくま文庫 な 4-1)

  • 作者: 長井 勝一
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1987/09/01
  • メディア: 文庫


長井勝一 「ガロ編集長」を読んだ。
さまざまな漫画家を世に送り出してきた名編集者の自伝本だ。
満州で山師をしていた話から、赤本、貸本漫画、ガロ。その人生は漫画の歴史そのもの。
面白くないわけがない。

トヨシマン9.jpg
(水木しげるの漫画に出演する長井勝一)

本の中で、長井氏の記憶に残るさまざまな漫画家を紹介しているのだが、
その中で一人、えええええーっ!っと驚いてしまう人物が挙げられていた。

その名は豊島雅男

誰だ。
名前だけじゃ自分だってピンとこない。
しかし長井さんの文章を読んでいくうちに、
水木しげるの漫画の出てきた人だ!と気づいたのである。

漫画界のレジェンドである水木しげるつげ義春池上遼一
彼らの顔にタバコの煙を吹きかける、
とんでもなく横柄で、嫌われ者のアシスタントとして豊島雅男は描写されている。

トヨシマン2.jpg
(豊島にタバコの煙を吹きかけられている三毛は、つげ義春がモデル)

トヨシマン3.jpg
(豊島は豊川名義になっている。タバコの煙を吹きかけられているのは池上遼一がモデル)

自分は、豊島が出てくる漫画が収録された水木しげるの単行本を三冊持っている。
それぞれ微妙に違うが、ほとんど同じ話だ。

おそらく1973年に描かれた「ドブ川に死す」がオリジナルなのだろう。
自分が先に読んだのは、オリジナルの2年後に描かれた「漫画狂の詩」。
どちらも「ビビビの貧乏時代」に収録されている。

「漫画狂の詩」ではタバコの煙を吹きかける豊島の奇行にただ驚かされただけだったが、
「ドブ川に死す」での豊島は、最後にラリってドブ川に落ちて死んでいたので驚いた。

豊島の訃報を知った水木だったが意に介さず。
それよりも朝食のパンが焦げたことに心を動かされる。

この漫画のラストがなんか好きだ。

トヨシマン8.jpg 

佐藤まさあきにとっても豊島は印象的なアシスタントだったらしく、
自伝「劇画の星をめざして」を読んだら豊島のことが描かれていて驚いた。

水木しげるから「アシスタントを一人回すから使ってやってほしい」という電話が入った。「どんな人物や。あんたとこで持て余したからこっちへ回すのと違うか?」と冗談で言ったのだが、水木の返事は「ううう…、そ、そんなことはナイっす」と、どうも歯切れが悪い。後から知ったことだが、この男は水木の顔にタバコの煙を吹っかけたり、当時、水木プロにいた池上遼一やつげ義春なんかを、人を人とも思わぬ態度で、水木も持て余していたらしい。それで、「あんた佐藤プロへ行ったらどう?」と言って厄介払いをしたということだった。

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豊島が辞めないなら自分らが辞める。
アシスタントが口々に言うので、ついに豊島は水木プロ追放となる。

トヨシマン5.jpg
(このコマの藤山プロは佐藤プロがモデルだと思われる)

しかし佐藤プロはあまりにもハードだったらしく、豊島は水木プロに逃げ帰ってしまう。
「劇画の星をめざして」にはこう続いている。

ところが三日ほどもした朝、事務所に出てみると、布団がきちんと畳んであって、本人は影も形もない。再び水木のところへ逃げ帰ってしまったのだ。その男が帰って水木に言うには、「あそこは地獄プロです。夜中の4時まで仕事をさせられて、やっと眠ったと思うと朝の9時にマネージャーの兄貴が叩き起こしにきます。あそこではとても身体がもちません。もう一度ここに置いてください」と言ったそうである。さすがの水木プロの持て余し者も、佐藤プロでは通用しなかったようだ。それにしても根性がない。うちでは近藤も村松も川崎も文句を言わず、平気で仕事をしていたものを…。余談だがこの男は、のちにフーテンの仲間に入り、ある朝、新宿御苑の池の中に落ちて死んでいたそうである。シンナーかなにかの吸いすぎということだった。

トヨシマン6.jpg

ちなみに「ドブ川に死す」では豊島水死のきっかけになった薬物はシンナーではなく、
睡眠薬となっている。

話を最初に戻す。
そんな豊島雅男が「ガロ編集長」にも印象深い人物として登場していたから驚いたのだ。
なんと豊島はガロで入選を果たしていたのである。

「漫画狂の詩」でも、17歳で二科展に入選した経歴が紹介されていた。
人格はともかく、才能あった人だったのだ。

トヨシマン1.jpg

しかし長井が言うには、
絵は新人離れしていたが作風はあまり個性的とは言えず、
処女作以降はパッとせず、苦しんでいたと言う。

「ガロ編集長」を読んでさらに驚いたのが、
豊島が結核もちだったと書かれていたことだ。

長井も結核で何度も死にかけた過去があり、水木と一緒に相談にのっていたという。
長井は生活保護を受けてでも治療に専念すべしとアドバイスしていたが、
豊島はその決心がつかないままズルズルと日々を過ごし、悲惨な結末を迎えてしまったという。

 
自分の知る限り、豊島の出てくる水木作品は改稿含めて3本あるが、
いずれも結核だったとは描かれていない。

なぜ水木しげるは豊島の結核エピソードを描かなかったのか。
おそらく読者に同情する余地を与えたくなかったのではないか。
そこまでのものが豊島のキャラクターにあったのだろうか。

結核とは肺病である。空気感染する。
肺病持ちがタバコ吸うのもすごいが、
うつる病気なのに相手の顔に煙を吹きかけてたというのも、
嫌われて当然すぎてよく分からない話だ。
ほとんど暴行罪。

そんな豊島雅男が描いた漫画とはどんなだったのか。
せっかくなので、豊島の作品が掲載されたガロ1967年11月号を購入してみた。


月刊漫画 ガロ 1967年11月号 (通巻39号) 白土三平カムイ伝㉟ 林静一処女作掲載号

月刊漫画 ガロ 1967年11月号 (通巻39号) 白土三平カムイ伝㉟ 林静一処女作掲載号

  • 出版社/メーカー: 青林堂
  • 発売日: 2024/02/11
  • メディア: 雑誌

作品タイトルは「不眠症」
読んだ感想は長井さんとあまり変わらなかった。

トヨシマン10.jpg

ネタバレになるのだが、
ようやく眠れたと思ったら死んでいたと言うのがオチで、
睡眠薬の服用による事故で死んだ豊島の最期を暗示した作品と言えないこともない。

 
この豊島作品が掲載されたガロには、
先輩アシスタントの池上遼一と、師匠の水木しげるの作品も掲載されている。

また、豊島と一緒にこのガロ11月号でデビューした林静一はその後、
漫画「赤色エレジー」や、小梅ちゃんのパッケージイラストを描いて有名になった。

豊島雅男にも、いろんな可能性があったのは間違いない。

しかし全てはドブに捨てられたのである。

 




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